大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和42年(オ)861号 判決

上告人

谷藤孝一

代理人

大沢三郎

谷藤藤蔵訴訟承継人

上告人

谷藤万次郎

外五名

被上告人

谷藤義蔵

外一名

代理人

阿部一雄

主文

原判決を破棄し、本件を仙台高等裁判所に差し戻す。

理由

職権をもつて審按するのに、記録によれば、本件訴訟は、第一審原告(以下単に原告という。)が、本件係争土地について自己に所有権のあることを主張し、これに所有権取得登記を有する第一審被告義蔵およびこれに抵当権設定登記を有する第一審被告畑山(以下両名を単に被告らという。)に対し、それぞれ右各登記の抹消登記手続を求めたのに対し、第一審参加人孝一(以下単に参加人という。)が、同様右土地について自己に所有権のあることを主張したうえ、原告および被告らを相手として民訴法七一条に基づく参加を申し立て、右三名に対して所有権の確認を求めるとともに、被告らに対して右各登記の抹消登記手続を求めたものであること、しかして、第一審は、被告ら勝訴、原告および参加人敗訴の判決をしたため、原告および参加人がそれぞれ控訴したが、原告が後に控訴を取り下げたこと、以上の事実が明らかである。

ところで、原審は、右訴訟関係を前提としたうえ、かかる場合は、第一審判決に対して参加人のみが控訴したにすぎないから、原告の請求は控訴審における審判の対象とはなつていない旨判示し、参加人の請求についてのみ判断を加え、原告の本訴請求については判断を加えていない。

しかしながら、民訴法七一条による訴訟は、同一の権利関係について、原告、被告および参加人の三者が互に相い争う紛争を一つの訴訟手続によつて一挙に矛盾なく解決する訴訟形態であつて、その申出は、つねに原被告双方を相手方としなければならず、その一方のみを相手とすることは許されないのであり、同条に基づく原告、被告、参加人間の訴訟について本案判決をするときは、右三当事者を判決の名宛人とする一個の終局判決のみが許され、右当事者の一部に関する判決をすることも、また、残余の者に関する追加判決をすることも許されないものであることは、いずれも、当裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和三九年(オ)第七九七号同四二年九月二七日大法廷判決、民集二一巻七号一九二五頁、同四一年(オ)第二八八号同四三年四月一二日第二小法廷判決、民集二二巻四号八七七頁参照。)。この趣旨に照らせば、本件訴訟において、参加人が控訴の申立をしたことにより、参加人、原告、被告ら間の三個の請求は、当然控訴審の審判の対象となるべきものであるから、原審としては、原告の控訴取下の有無にかかわらず、同人の被告らに対する請求についても、同一判決により判断を加えるべきであつたといわなければならない。したがつて、これと異なる見解のもとに、原告の本訴請求について判断を加えなかつた原判決は、民訴法七一条の解釈適用を誤つたものというべきであり、原判決のこの瑕疵は、訴訟要件に準じ、職権をもつて調査すべき事項にあたるものと解すべきことも前掲判例(昭和四三年四月一二第二小法廷判決)の示すところであるから、本訴については、上告代理人の上告理由について審理判断するまでもなく、原判決は破棄を免れず、さらに審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すのが相当である。

よつて、民訴法四〇七条一項を適用し、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(長部謹吾 入江俊郎 岩田誠 大隅健一郎 藤林益三)

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